「俺たちのいない間にすごい船が来ていたんだなあ」 公民館らしき建物の前にスクーターを停め、再び帰宅するサラリーマンを物色することにした。
「また最近は報告書の不備が目立っておりますので、断片的なものでも省略しないように……」 やくざと聞いて全員から笑顔が消えた。洋平を見る。
「隠蔽って言われると……せいぜい五十万の話だし」男が心外そうな顔をする。 32
「孫親方に頼みがある。実は英会話の講師をしてほしい」 「おまえ、当直だったのか」枕に頭を乗せたまま、そんな場ちがいなことを口にした。
コップの水を喉に流しこんだ。そして半分飲んだところで、戸田という男の最後の台詞を思いだした。 「そうなの」
「うん。大丈夫だよ。とっくに職場復帰しているし、病院には週に一回、包帯を替えに行くだけだし」 「ふざけんな」